プレイグループのナレッジ共有

 プレイグループが共同幻想を作り出すためには、ナレッジ共有が必要である。そこで何が行われるべきかは古今東西様々に語られてきたけれど、いちゲームマスターとしてできることは非常に限られている。
 ことセッションの進行のみに関するナレッジ共有で考えれば、古典的な題材として「ダンジョンの攻略方法」があった。昔においては、これはゲームセンターのシューティング配置を覚えたりキャンセル技のスキルを身につけたりするのと同様の、ひとつのテクニックであった。
 だが、セッションを運営する基幹条件としてこれが付加されるようになると、今度はそれが理解できないとセッションについていけない羽目になる。昔は、ひいひいいいながらダンジョンから生還できれば、少なくとも冒険は成功と言えていたのだ。それが、ダンジョンの中でお涙頂戴のドラマをやらされる羽目になった日にゃあ、ダンジョンをまともに攻略できないような連中は話にならないということになってしまうのだ。
 それはいけないということでそのテクニックが無視されはじめ、今度はひとは何だか、自分ができの悪い三流ドラマを見ている気分になってくる。シューティングゲームで重要なのは必死になって敵機の弾を避けて攻撃を当てて高得点を取ることであり、幕間のキャラクターの萌え設定は副次要素でしかなかったはずなのに。
 ベテランはここで、ダンジョンの攻略の仕方というものをプレイグループの人間に伝えることができる。勿論やりすぎは問題を起こすというところを一つ抑えておいてもらわないとならないが…
ダンジョンの攻略の仕方を伝える
 DMは、自分がDMに伝えておくべきだと思うものをPLに確認する必要があるし、自分なら必ず思いつくことに関しては伝える必要がある。
 ダンジョンへの進入口は一つだけではない事は、ベテランゲーマーなら周知のことだろう。それはプレイヤーに伝えた方が良いことの一つだ。つまりこうだ。
 「その塔は大変堅牢にできていて、正面の鉄扉は武装したトロールが守っている。塔の材質は重い石材のようだがはっきりせず、エーテル体になって進入できるかどうかは試してみないとわからない。勿論ディメンジョンドアやテレポートが可能かどうかは神のみぞ知る。塔の周囲は60mほどでほかに出入り口は見当たらず、採光用の窓は小さい。超小型サイズのキャラクターならここから進入できるだろうね。塔の高さは20mといったところで、採光用のまどがちらほら見られる。塔の屋上部分はここからは見えないが、フライを使って空を飛べばそこまで到達できるだろう。」
 ダンジョンに進入の際は警戒の方法を伝えることも忘れてはならない。
 まず慎重にゆっくり進むか、スピードを優先して進むか、あるいは徹底して罠がないか警戒して進むかを聞き、慎重に行く場合にはランタンで前方と後方を照らして警戒し、一歩一歩進んでいき、その結果常に出目10の捜索が行われていることを伝える。通路の角を曲がる際には手鏡を使って警戒し、罠を発見した際にはどのような調査の結果罠を見破ったのか、あるいはどのように罠を解除したのか伝える。
 こうしたことを行っていかないと、初心者は自分がダンジョンで一体どのようなことを行っているのか理解できず、故にダンジョンが嫌いになるのだ。