事象(de re )様相と言表(de dicto)様相

 二者の区別が問題となり、また必然性と偶然性の峻別そのものが問題とされてきたが、問題となり得るのは言明もしくは事態のみである。この必然性は記述に拠り、記述によって指示される対象は違うとする議論がある。また、必然的性質と偶然的性質の判定は、全ての性質が多義的に表記し得る故に意味をなさぬという論もある。が、それは発言者が記述しようとした内容に関してあまりに突飛である。
 諸可能世界にまたがる同一性の基準が存在すれば、同一個体に対する必然的性質と偶然的性質の峻別に悩まずにすむ。現状では、必要十分条件を満たすのは数学的性質くらいしか見出せない。
結局のところ個体性、もの性のようなもので峻別する方法は無く、我々は捉えられる個体の特性で個体の同一性を判断する必要があろうから、純粋に質的なやり方で可能世界の個体を捉える必要がある、とする議論が存在する。しかし、それは可能世界という概念の捉え間違いから起こるのではないか。